トランプ米政権によるイラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官殺害を巡り、欧州で戸惑いが広がっている。表向きは同盟を結ぶ米国との連帯を示すが、中東の戦乱が欧州に飛び火する事態を避けたいのが本音だ。北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は6日、司令官殺害は「米国の決定だ」と述べ、同盟内で議論した決定ではなかったと強調した。
NATOは6日、イランを巡る情勢の緊迫化を受け、ブリュッセルの本部で臨時の大使級会合を開いた。会合後に記者会見したストルテンベルグ氏はイランが中東の安定を損なっているとして「一段の暴力と挑発は慎まねばならない」と警告した。
米国が示した司令官殺害理由に加盟国が理解を示したと説明したが、攻撃そのものは「米国の決定だ。(過激派掃討の)有志連合やNATOの決定ではない」と述べ、距離を置いた。イランが米国に報復した場合、NATOとして集団的自衛権を発動するか否かの質問には直接応えなかった。
米軍は現地時間3日、イラクの首都バグダッドでの無人機攻撃でイランの対外工作を仕切ってきた最重要人物であるソレイマニ司令官を殺害した。
在イラク米大使館や駐留米兵らへの襲撃の報復とされるが、トランプ米大統領は軍が提示した中で「最も極端な選択肢」(米メディア)を選んだ。イラン側は報復を宣言し、無制限にウラン濃縮活動を進めるとも表明した。
イランの働き掛けを受け、イラク議会は5日、5000人規模とされる駐留米軍の撤収を求める決議を採択した。過激派組織「イスラム国」(IS)掃討に従事する米国主導の有志連合は同日、「基地防衛」を優先するとして、イラクでの掃討作戦を一時停止すると発表した。
有志連合には英独仏など欧州各国も加わる。独政府は7日までにイラクに駐留する部隊の一部をヨルダンやクウェートに移す方針を固めた。
そもそも中東と地理的に近い欧州では、現地での戦火の拡大は難民流入やテロ拡散につながり、社会や政治の安定を脅かすとの懸念が強い。加えてイラン核合意から一方的に離脱したトランプ政権は今回、事前通告さえなしに司令官殺害に踏み切った。こうした「独断専行」への不満はかねて根強いものの、過激派掃討やロシアとの対峙を独自に担う覚悟まではない。
司令官殺害のニュースが世界を駆け巡ると、欧州からは「緊張緩和に全く役に立たない」(マース独外相)、「暴力、挑発、報復の循環の停止を」(ミシェル欧州連合大統領)などの懸念が相次いだ。これに対し、ポンペオ米国務長官は各国外相との電話協議後、「欧州は我々が願うほどは助けにならない」と強い不満を表明していた。
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2020-01-07 11:00:00Z
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