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科学を政治のしもべにしてはいけない 菅政権による基本的人権の危機 | | 志位和夫 - 毎日新聞

 菅義偉首相が日本学術会議から推薦された新会員候補6人の任命を拒否したことは、強権をもって異論を排斥する現政権の危険をまざまざと示した。これは決して一部の学者だけの問題ではない。国民全体の基本的人権が脅かされる深刻な問題をはらんでいる。

 基本的人権という点で、私が危機感をもったのは、10月に行われた中曽根康弘元首相の内閣・自民党の合同葬に際しての政府の対応だ。私は、「慶弔に党派なし」が信条で、いったんは出席するとお伝えした。しかし、政府は各国立大学などに弔意を示すよう要請した。これは事実上、内心の自由を侵害する強制だ。歴代の元首相の合同葬の際にも同様の要請はされているが、今回の「要請」は問題の重さが違う。

 理由を示さず、学術会議会員の任命を拒否した政権によるものであり、基本的人権として憲法で保障された思想・良心の自由、表現の自由、学問の自由が侵害される危険が増していると感じた。私は欠席することを決めた。

「うその自転車操業」と国会の否定

 学術会議の問題は大きく分けて二つある。一つは、任命拒否の理由を説明できないということだ。菅首相は最初、「学術会議の総合的、俯瞰(ふかん)的な観点の活動を確保するため」と述べていた。しかし、私が、「6人を任命すると、総合的、俯瞰的な活動に支障が出るのか」とただすと、答弁ができない。「大学が偏っている」「多様性を大事にする」と言い出した。しかし、6人のうち3人は少数のはずの私大の研究者だ。この点を指摘すると、今度は「事前に調整ができなかった」と説明が変わった。しかし、その「調整」相手だったはずの学術会議の元会長は「調整はなかった」と証言した。まさしく「うその自転車操業」だ。理由もなしに任命拒否されれば、学術会議は会員をどう選考・推薦していいか分からなくなる。任命拒否は、人事権を振りかざして、科学者をいいなりにさせようというものであり、学術会議の自主性、独立性を根本から破壊するものだ。

 もう一つは、そもそも任命拒否が違法だということだ。日本学術会議法は、新会員について「学術会議の推薦に基づいて首相が任命する」と規定している。この推薦制に変更した法改正の際(1983年)、当時の中曽根首相ら政府側は、首相の任命はあくまで「形式的任命」だと繰り返し答弁している。つまり、「任命拒否をしない」というのが、国会審議を通じて確定された法解釈だ。これを政府が勝手に変えるならば国会審議の意味がなくなる。国会の否定、三権分立の否定だ。

現実となる「学問の自由の侵害」、歴史に…

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December 02, 2020 at 05:00AM
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